あと少しで、今日の営業が終わる。
バレンタインデーから一ヶ月後の、3月14日。数日前まで、この日が来るのが楽しみで仕方がなかったけれど、今となっては落ち込む気分も隠せず、今日もまた何度目かのため息をついた。
ちょうど一ヶ月前に大智さんとした約束、あんな小さな約束を期待しすぎたのがいけなかったのか。
(ため息つくと、幸せ逃げるんだよね…)
そんなことを思っても、自然と出てしまうのだから仕方がない。
黙ってテーブルの上にある空皿を片付けながら、時計を見ると日付もかわり、3月15日の午前1時半。とうとう約束のホワイトデーも終わってしまった。
「瀬里、どうしたん?なーんか、今日も元気ないし」
「そう?そんなことないよ。…ちょっと疲れたのかも」
ホワイトデーの日の客入りが、それなりに多かったのも本当だし、バタバタとしていたのも本当だ。しかも、いつも厨房にいるはずの大智さんは、急な曾我さんの頼みで日本にはいなかった。
このことを聞いたのは一週間ほど前のこと…。さすがに約束のことを持ち出すなんて、あまりにもわがままなことだし、言ったら言ったで大智さんを困らせてしまうとわかっていたから、何も言えなかった。
そして今日が約束の日。自分で無理だと理解はしていても、やはり落ち込んだままで、気分が晴れることはなかった。
「あー、今日もいっぱい客来たもんねぇ、でも明日は休みっしょ」
「…うん。……あのさ、大智さんて…いつ、帰ってくるのかな?」
「大智?さーねぇ、なにまた連絡ないん?」
連絡がないのはいつものことだし、基本的に日本を出てから帰ってくるまで、手紙が来たことはあっても、電話などでリアルタイムに話すことはない。今どこにいる?知らない。という会話が店で飛びかっているのもどうかと思うけど、これも毎回になるといいかげん慣れてくるらしい。
(大智さん…今どこにいるんだろう…)
結局今日も、沈んだ気分のまま仕事を終えて、いつもどおり自転車に乗りながら家へと帰る。徐々に寒さは落ち着いてきたけれど、夜明け方ともなればまだまだ寒い。自転車をこいで顔に当たる風は冷たくて、家に着くころにはすっかり鼻の頭が赤くなるほど冷えきっていた。
「ただいま…」
真っ暗な部屋の中は寒々しくて、すぐにストーブをつけると目の前に座り込む。
じんわりと暖かくなっていく感覚に、その場からなかなか離れられなくなってしまった。本当なら今日大智さんと一緒に…なんて、まだ思っている自分の女々しさが嫌になってくる。
こうやってひとり黙っていれば黙っているほど、頭の中が大智さんのことでいっぱいになってしまう。
もうホワイトデーなんていいから、ただ大智さんに会いたい。大智さんと一緒にいたい…と。
(早く、帰ってこないかな…)
そんなことばかり考えている俺の耳には、かすかにストーブのボォーっという小さな音が聞こえるだけ。そんな静かな空間の中、俺はその場にゴロンと横になると、徐々に瞼が重くなっていくのを感じる。そして暖かさに吸い込まれるように…気つけば眠りの中へ落ちていた。
***
目が覚めると、いつもと変わらない天井が見えた。
いつのまに寝てしまったのか、外はもうすっかり明るくなっている。昨日は仕事から帰ってきてすぐに、倒れこむようにして寝てしまった。ベッドの上で、毛布をかけて…とそこまでの状況に違和感を感じる。
(…?いつベッドに入ったっけ?)
確かベッドにも入らず、コートも脱がずにそのままストーブの前で、倒れるようにして寝てしまったはずだ。寝ぼけてベッドの中へ入ったとしても、コートをわざわざハンガーにかけて寝るだろうか。
昨日着ていたコートがきちんとハンガーにかけて、壁に吊るしてあるのが視界に入った。不思議に思った俺は、ベッドから上体を起こすと、すぐ横の床にコートを頭から被った人がひとり倒れている。
(…だ、誰?)
恐る恐るコートに手を伸ばしてめくろうとすると、こもった声を出しながらモゾモゾと寝返りをうち、かすかに覗くコートの隙間から相手の顔が確認できた。
(…大智、さん?なんで?)
硬い床で寝返りをうっても、まだ目を覚まそうとしない大智さんは、いつここに来たのか気持ちよさそうに熟睡したままだ。今のこの状況がまだよくわからなくて、あたりを見回すと、テーブルの上にちょこんと小さな箱が置かれている。
なんだろうと、ベッドから立ち上がり小さな箱を手に取ると、すぐ隣りにはカードが添えられていた。
『瀬里ちゃんへ』と『遅くなってごめんね』という文字が大智さんの字で書かれている。
「もしかして…」
箱を開けてみると、トリュフチョコレートがちょこんと上品に並んでいて、それが一ヶ月前にも見た大智さんの手作りチョコレートなのだとすぐにわかった。
昨日、俺が仕事中だった頃にはまだ大智さんは帰ってなかったし、いつの間にこのチョコを作ったんだろう。まんまるの形をした美味しそうなトリュフを、一粒そっと手に取ると口に含んだ。テーブルに置かれてまだそんなに経ってなかったのか、ちょうどいいやわらかさで口の中に甘さが広がる。
「美味しい…」
その一粒を味わいながら、まだ起きそうにない大智さんを覗き見る。
今すぐにでも、お礼を言いたい気分だったけど、気持ちよさそうに眠っているところを起こすのも気が引けて、毛布をそっと大智さんの背中へかけてあげた。
大智さんが目を覚めたら、すぐに、一番最初に伝えたい。
『ありがとうございました』と…そして『おかえりなさい』と。
***
その頃、ブルーサウンドでは…。
「ったく、ふざけんなっつーの!人が寝てる間に帰って来たと思ったら、厨房でガチャガチャどたどた、しまいには人叩き起こして、『今日まで休むから、よろしく』てあー腹立つ!!」
睡眠妨害され、なおかつ職場放棄までしたヤツに、キレる同僚ここに一名。
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ん?バレンタイン編は終わったんじゃなくて?(笑)
はい、終わりました、一応。で、ホワイトデー?自分でもよくわかりません(笑)
うーん、何を書こうかなぁ〜と思ってたんですが、そういえば大智バレンタイン・リベンジはどうなったんだと、個人的に気になりまして(笑)←自分が勝手に作った捏造ですが。
…なので今回そのリベンジにしてみましたv
果たして、これはリベンジになってるんでしょうか?(笑)大智よ、お前はつくづくツイてねぇなと!!日本に帰ってきて、気力でチョコ作って、倒れそうになりながら瀬里ちゃんちに行って、果てた。…というところだろうか(苦笑)
要するに愛されているわけですよ!瀬里ちゃん!!(笑)
ちなみに、瀬里ちゃん。あなた家の鍵は閉めましょう(笑)←大智不法侵入事件。
ここでまたまた冬コミ情報。
ケネス×朝倉編も終わり、次は和輝×笙惟編に突入しております!!…3連休であまり進まなかった…。これでこの話を終わらせて、嘉悦×聖司を考えて、原稿を印刷モードに並べなおして、印刷してコピーして、製本して…て、間に合うのかな、自分(汗)
もうこれからの土日は、いっぱいいっぱいで使えません…(汗)平日は寝不足になるので作業したくはないんだけどなぁ〜…。そうも言ってられないか…なんて言いながら、今はもうこんな時間、立派な寝不足です(汗)
次回のブログ、うん…何を書こうかななんて、まったく、これっぽっちも、何も考えちゃいません!(笑)
目標は一週間に一度更新っ!ということでvv
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